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或る時ふと

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 * 或る時ふと
 底の浅い読み物ばかりが送り出され消費される世に生まれ遭わせてしまった。この惑星が滅びるまで の間に、もう少しましな文学が、人々の身の裡を照らす時があるのだろうか。いいや、人々は決してそのようなものを望みはしない、何時の世であっても。極く 僅かな人が、人知れず灯火を掲げ続けているのだろう、その最期の滅びの時まで。そしてその記憶が微塵の粒子となって新たな宇宙を生成するのだ。いま、絶え ず私達のからだを通過し続けている素粒子も、劫億の時空を隔てて滅び去った宇宙の記憶を運んでいるのだろう。だから私達は時折理由のない悲しみに身の裡か ら浸されてしまうことが有るのだ。

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