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ハムレット

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 ちょっと面白い催しを知って、行ってみた。
 Reading Shakespeare Hamlet
 Read by S.T.Sato (Trained at Peter Brook's Cygnet Training Theater & Royal Academy of Dramatic Art, England)
 私は英語はよく分らないのだけれども、俳優としての養成訓練を受けたのは、福田恒存氏率いるところの現代演劇協会だったので、シェイクスピアには馴染み が有る。ばかりか、研究生一年の時の授業でオフィーリアの台詞を演ったり、発表会はマクベスだったりしたのを思い出す。
 平日の昼間、1時間にも充たないささやかな催しだったけれど、仲々興味深かった。内容は、ハムレットから幾つかの場面を抜粋して、英語で朗読すると云うもの。意味が分らなくても、シェイクスピアが紡いだ英語の響きを楽しんでほしいと仰有るので、そう致しました。
 斑らにしか分らない英語を耳にしながら、場面転換に使われていたエリザベス朝の音楽を聴いていると、歌舞伎の台詞回しが下座音楽と切離せないように、「シェイクスピアの英語にはこの音楽と切離せない響きがあるな」と感じる。後でサトウさんに訊いてみると、「そうです。」と仰有る。

 オフィーリア狂乱の場のオフィーリアの台詞がとても可憐で、何だか知的にさえ聞こえるのが不思議で、「狂乱」という日本語の文字から受ける印象とは随分 違うのも面白かった。それが、サトウさんの解釈による表現なのか、シェイクスピアの台詞回しとして定まった型なのか、知りたかったので訊いてみと、「型」なのだそうである。
 ふと思い出した。研究生だった時、遠藤周作氏が『薔薇の館』と云う戯曲を書き下ろし、芥川さんが演出をなさった。そのヒロインが心を病んで「狂う」のを 芥川さんは可憐な、無垢な狂いとして演出していらしたが、あれはつまり、この「型」を採ろうとしていらしたのだ。あれから四十年近い歳月が過ぎ芥川さんも 遠藤氏も亡くなって、今頃になってやっと理解する、なんと情けなくも愚かな「研究生」であることよ。

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