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佳い文章に触れておく

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 *佳い文章優れた文章に触れておく(言語体験)
 朗読が「ことば」を対象とするものである以上、朗読の質は読み手の言語経験に影響されざるを得な い。当たり前の事だが、朗読を教えるという立場に立たされてみ て、改めてその事を考える。
 私と朗読の勉強を始める以前にも、他で朗読を勉強していて、朗読についての経験は十分持っているのに、どうしても或る壁を越えられない、いつも同じ型の中 に嵌まり込んでしまうという人達に出会うようになった。何とかその先へ進んで欲しいと、駄目を出しテキストを変えて勉強してみるのだが、壁を越えられない。テキストは皆それぞれに自分の読みたい作品を選んで来るわけだが、それで或る時おやと気が付い た。読み易い、誰が読んでもそれなりに格好がつくような、手軽な物ばかりなのだ。そこで、「少し読み難いと思える文章も読んでみて欲しい、例えば国木田独 歩や里見弴なんかも」と言うと「そう云う作家、聞いた事ありません」と応えが返って来た。そういえば、誰からか「今や芥川も古典ですからね」と言われた事 があった。 佐久間先生が、私達に毎月一冊の文庫本を選んで下さっていた、その事の意味を私は漸く知る。幅広く良質の文学に触れておくことが、朗読にとって何より重要 なのだ。

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